アラスカ州での生活上の注意事項
米国では、法律制度や生活習慣に違いがあることに気づかず、刑事事件などのトラブルに巻き込まれる日本人の方が後を絶ちません。以下に、米国で生活をするに当たり注意すべき諸点について紹介します。
なお、短期間の旅行者の方もこのようなトラブルに巻き込まれることがありますので、同じく十分にご注意ください。
1.交通違反
(1)飲酒運転
米国では規定以上の酒量を飲酒し運転することは犯罪となります。飲酒運転は、高額の罰金が課されるほか、免許取消しなどの処分を受けることもあります。日本在住時と同様に、飲酒の量にかかわらず、飲酒したら運転しないことが勧められます。
(2)警察官からの停車命令違反
米国では、走行中の路上で、パトカーが青色や赤色の警告灯を点滅させながら当該車両の後方についたら、パトカーから当該車両に対して停車命令が出されたことを意味します(日本とは異なり、パトカーはサイレンを鳴らしません)。その場合、当該車両の運転者は直ちに道路の右側に車両を停車させる必要があります。停車後は、警察官が来るまで、車内で必ず待機する必要があります。多くの場合、警察官は運転者に対してガラス窓を開けるよう指示しますので、その指示に従って下さい。警察官は車内の運転者などが武器をを用い対抗しないか、疑いの目で観察しますので、車両内で紛らわしい動作はとらないことが重要です。
(3)停車中の緊急車両の追い越し違反
高速道路で、パトカー、救急車等の緊急車両が警告灯を点滅させて道路端右側の路肩や中央分離帯の路肩に停車していることがあります。この場合は、緊急車両のすぐ隣の車線を走行して緊急車両を追い越すことは違反となりますので、路肩から一車線あけた次の車線を使い追い越す必要があります。これは、職務執行中の警察官や救急隊員、また救出中の事故の負傷者などを保護するためです。
但し、他の車両が走行しているため、自分の車両の進路を変更できないような場合は、車線を変更せず、そのまま速度を十分に落とし、注意しながら追い越すことができます。
(4)警察官に対する公務執行妨害
米国において警察官の身体や所持品に触れる行為は公務執行妨害として直ちに逮捕されます。不服があっても、現場では興奮したり、悪態をつかず、警察官の指示に従って下さい。不服等は、裁判で主張するものとされています。
(5)スクールバスの停車合図
(a)スク−ルバスが停止(stop)の合図を出している場合は、十分な距離をおいて停車しなければなりません。また、その場合、対向車線を走行中の車両も停車する必要があります。
(b)公道上では、学校の出入り口近辺にスクールゾーンが設けられています。このスクールゾーンのライトが点滅している際には、定められた速度で徐行しなければなりません。
(6)運転中の携帯電話の使用
2012年5月11日から、アラスカ州では車両を運転中に携帯電話でテキストの送受信の操作を行うことは禁止されています。なお、携帯電話の通話は禁止されておりませんが、運転中の食事等と同様に運転を妨げるものと見なされる可能性があるので注意が必要です。
(7)アラスカ州での道路交通法上の規定等
○ハイウェイでは天候にかかわらず、日中でもヘッドライトを点灯させなければなりません。
○日の出後30分までと、日の入りの30分前からはヘッドライトを点灯しなければなりません。
○一般車両は 踏み切りで一時停止してはなりません。
○非常点滅灯をつけた葬儀車列の中に割り込んだり、車列の間を横切ってはなりません。
○車両登録の更新は原則、2年に1回行う必要があります。車両登録更新の期限が来たら、郡の登録事務所において登録更新を行い、
ステッカーを張り替える必要があります。なお、更新は郵送またはオンラインで行うことができます。
http://doa.alaska.gov/dmv/reg/require.htm
○1歳未満の乳児又は体重20パウンド(約9キログラム)以下の乳児は
後部座席に進行方向とは反対向きに設置したチャイルドシートに座らせなければなりません。
○1歳以上3歳以下の幼児で、体重20パウンド(約9キログラム)以上の幼児は 後部座席に進行方向向きに設置したチャイルドシートに座らせなければなりません。
○4歳以上8歳以下の児童で、身長が4フィート9インチ(約144センチメートル)以下の児童は座席に設置した 児童用簡易シートに座らせたうえ、シートベルトをさせなければなりません。
○アンカレジ市では、スパイクタイヤの使用は9月16日から4月30日まで認められています。なお、北緯60度を境としてスパイクタイヤの使用期間は短く設定されている可能性がありますので、ご注意下さい。
2.自動車運転に際する注意点
アラスカ州では野生の動物(ムースなど)が突然路上に出没することがあります。スピードを出さず、動物の出没に十分に注意しながら運転する必要があります。
3. 家庭内暴力
米国では、家庭内暴力は大変深刻な問題となっているため、厳しい対応が取られています。夫婦喧嘩であっても、警察に通報された場合は、暴力を振るった事実や心理的威圧を与えるような言動があったと認められれば、逮捕される場合があります。また、場合によっては、多額の弁護士費用を支払う必要が生じます。そのような事態を招かないようにするためには、日頃から家庭内においても言動には十分に注意を払うことが肝要です。
4.子供をめぐるトラブル
(1)児童虐待・保護怠慢
米国では、親を含む大人が児童に対して、「暴力」、「威圧」、「性的虐待」などの不適切な行動をとることは厳しく取り締まられています。この取り締まりは、日本とは比較にならないほど厳格におこなわれています。また、日本人の児童に見られる蒙古斑点が暴力を受けた後にできるアザと見なされ、警察や児童保護局から不要な嫌疑をかけられることもあります。
米国では、「児童放置」(保護怠慢)についても、法律に従い、厳しく取り締まりがおこなわれています。各州により差異はありますが、一般的に13才未満の児童は自宅や車両に放置したり、親が同伴せず出歩かせることは安全上問題があります。
米国市民は、児童虐待・保護怠慢と疑われる事案に接した場合は、警察や児童保護局に直ちに通報することになっています。警察や児童保護局は、通報を受けると、直ちに調査を実施します。被疑者となった場合は、警察や児童保護局から事情聴取を受けますが、この段階で嫌疑がはれない場合は、司法の場で弁護士を通じて嫌疑を晴らす必要があります。なお、親が被疑者となる場合は、当該の児童は被疑者の親とは同居ができず、疑義が晴れるまで、親の知人などに一時的に預けられる可能性があります。
児童虐待・保護怠慢の嫌疑をかけられると、金銭的な面での負担が生じるばかりか、精神的な面でも相当な苦痛が生じますので、少なくとも次のような諸点に気をつけることが必要です。
○児童に対して「暴力」、「性的虐待」、「威嚇」を行わない。躾の一環としてであっても、児童に対する「暴力」と「威嚇」は正当化されることはない。例えば、日本では父親が幼い自分の娘と一緒に風呂に入ることがありますが、米国では虐待やセクハラと捉えられる可能性が高い。
○自宅外で児童に接する際は、不要な嫌疑をかけられないようにするため、「暴力」、「性的虐待」や「威圧」と捉えかねない行動(叩くまねや大声で話すことなども含む)を取らないよう十分に注意する。
○自宅内での児童への接し方が、児童が書いた作文や自宅で撮った写真から自宅外に漏れ、希ではあるが、不要な嫌疑をかけられることも生じていますので、この点にも十分に注意する。
○法律で定められている訳ではないが、一般的に13歳以下の児童を「自宅」に一人で残してはならないと考えられている。従って、不要な嫌疑をかけられることを避けるために、13才未満の児童を「自宅」や「車両」に、短時間なりとも、放置しない。
(2)米国人との間の実子の誘拐問題
米国では、一方の親権者が他方の親権者の同意を得ずに実子の居住地を移動させることは、実子誘拐罪にあたります。米国人と国際結婚し実子をもうけた場合で、例えば、実子を母国の日本に連れて帰る際は、婚姻関係が解消されている場合でも、相手の親権者から同意を取り付けることが法的に求められています。
現在、日本でもこの実子の誘拐問題(国際的な子の連れ去り問題)への取り組みが検討されています。詳細については、外務省のホームページの国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)のページをご覧下さい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/index.html
5. 公共の場所での口論をめぐるトラブル
繁華街の路上や飲食店などの公共性のある場所で、感情的になり口論したり、大声を出し騒いだりすると、暴力行為が伴わなくとも、通行人が警察に通報することがありますので、注意を要します。例えば、他州では、繁華街の路上で友人関係にある男女間で口論となり、その場から立ち去ろうとした女性を男性が追いかけたら、通行人が警察に通報し、公共の秩序妨害違反と公務執行妨害により逮捕されたケースが報告されています(背後からいきなり警察官に取り押さえられ、警察官と気づかずに抵抗したため、公務執行妨害が加えられてしまいました)。また、同じく他州での例として、日本人の夫婦が遊楽園で口論となり、ホテルに戻ろうとした妻を夫が腕をつかみ制止しようとしたら、警備員が警察に通報し、夫婦間暴力の容疑で夫が逮捕されたケースも報告されています。
6.生命にかかわる脅迫罪
米国では、州により異なりますが、相手の身体や生命に危害を与える言動を行った場合や相手の家族、友人に対し危害を加えるといった言動を行った場合は、生命に関わる脅迫罪として逮捕される場合があります。例えば、元の夫からしつこく電話があったため、殺してやると言ってしまうと、生命に関わる脅迫罪の容疑で警察に被害届が出され、警察から逮捕される可能性があります。
7. 学校関係のトラブル
(1)スクールバスをめぐるトラブル
他州では、スクールバスの運転手に対して不注意な点の是正を求めるべく、学生の親が運転手の意に反してスクールバスに乗り込み話しかけ、警察沙汰になったケースがありました。スクールバスの運転手に対する注意や意見は、スクールバス運行責任者に伝達する方法もありますので、事情を冷静に見極めて対応することが必要です。
(2)校内での所持品をめぐるトラブル・教師に対する暴力
米国の学校では、学校や教師の安全を脅かす行為があったと見なされると、当該の学童は退学処分になりますので、この点について、子息に十分注意しておくことが必要です。例えば、学童がインターネットで見つけた爆弾製造法を興味本位で紙片にメモ書きし学校で持ち歩いたり、教師の肩を押しただけで、退学処分を受けた事例が他州で報告されています。
8.飼い犬をめぐるトラブル
州によっては、動物を車内に放置すると、動物虐待の事案として当局から事情徴収を受けます。買い物をしている間飼犬を車内に放置し、州の保健所から事情聴取を受けた事例が他州で報告されています。
9.個人売買を仲介するウェブ・サイトをめぐるトラブル
ウェブ・サイトを利用して不用品が売買されていますが、相手とメールのみでのやりとりが行われる場合、相手の身元を確認できないため、場合によっては詐欺の被害に遭うことがあります。偽物のマネー・オーダーや小切手をつかませられるケースなどが報告されています。
10.ハロウィーン時の注意事項
ハロウィーンは毎年10月31日に行われる全国的な行事で、子供達は大変楽しみにしていますが、予期せぬ事故が起きることもありますので、少なくとも次の諸点について子供達に守らせて下さい。
(1)子供達に転倒や交通事故に注意させるとともに、とがった突起物があるなど凶器となり得る物は持ち歩かせない。
(2)大人と一緒でなければ、勝手に他人の家の敷地内に入らせない。また、家主が敷地内への立入りを拒む気配がある場合は、大人が同伴していても絶対立入らない。過去に、誤解に基づき、ある青年が家主の警告を無視し家主の家に近づいたため発砲を受けたケースが報告されています。
(3)家の玄関灯が消えている場合は、家主が在宅であっても敷地内に入らせない(家主がハロウィーンに参加しない場合や子供達に渡すキャンディー等の菓子が全て無くなった場合に玄関灯を消すことが多い)。
11.遺産相続詐欺
アラスカ在住の日本人に対し、個人資産の管理人と名乗る人物から「死亡した日本人の遺産の請求手続きを取りたいので、関心ある場合は連絡して欲しい」旨の手紙が届いたので、調べてみると、手紙の差出人及び 死亡した日本人は全く関係のない人物でした。
このような場合、詐欺に巻き込まれる疑いが濃厚です。詐欺の場合、仮に差出人に連絡を取ると、遺産の現金化や海外送金の手数料、現地政府に納める税金など、経費が必要であるとして多額の送金を求められます。送金した後は連絡が途絶え、お金は戻ってきません。
このような手紙を受け取った場合は、決して差出人に連絡を取らず、次の対応のいずれかを取ってください。
(1)手紙自体を無視する。
(2)米国郵便局調査部(U.S. Postal Inspection Service、電話1-877-275-8777)に対し、詐 欺の疑いがある手紙を受け取った旨報告し、善処を求める。
12.アラスカ州での釣りについて(特に、日本人旅行者の方は気をつけてください)
(1)アラスカ州では釣りのための規則が相当細かく規定されており、釣りをするためには必ず許可証(フィッシング・ライセンス)を購入し、かつ携帯することが義務づけられています。違反したときには罰金が課せられます。
(2)禁猟区域・期間は毎年改定されますので、事前に情報を入手して違反しないよう注意することが必要です。
(3)釣りのための規則は急に変更されることがありますので、釣りに行く前に確認することが勧められます。